Title
保元物語
Subtitle
保元物語下
Description
・・・
新院は其後長寛元年癸未八月廿六日
御年四十六にて讃岐の府中鼓岡にて
つゐにかくれさせ給ひけり當國の中白峯
といふ所にて焼上し奉る御意趣ふかかり
し事なれは煙は都へなひくとそきこえ
し御追号あるへしとて大炊の御門河
原にて崇徳院とそ申ける其比西行
法師四國修行しけるか白峯の御墓
にまいりてつく/\と候てあな事もをろ
かや太上天皇の第一の皇子いつれの
人かはかたふけ奉るへきなれ共御果報の
勝劣なるによて遠國の苔の下にましま
す事よとおもひ奉て墨染の袖をしほ
りけるに虚空にこゑありていはく
松山のなみになかれてこし舟の
やかてむなしくなりにけるかな
西行ふしきのおもひをなして御返事
にとおほえて
よしやきみむかしの玉の床とても
かゝらん後はなにゝかはせむ
とよみけれは御はか三度まてゆるきける
こそおそろしけれ・・・
Note
ほうげんものがたり 【保元物語】
軍記物語。三巻。作者未詳。「平治物語」の作者と同じともいわれる。鎌倉時代に成立、のちさまざまな成長・変貌を遂げた。保元の乱の顛末を和漢混交文により記し、武士たちの活躍を描く。保元合戦物語。保元合戦記。保元記。
End
底本:
京都大学附属図書館蔵 「保元物語」上中下三冊。
京都大学附属図書館