Title  山家心中集(妙法院本)  Note  凡例  一 底本は、各作品冒頭の改題に記した  二 本文の翻刻にあたっては次のように整理を加えた。   1 漢字は通行の字体を使用した。   2 仮名遣いは底本のままとし、歴史的仮名遣いと異なる場合は、それを( )に入れて傍記した。ただし、漢字    を当てたために振り仮名の形となったものには、傍記しなかった。   3 清濁及び句読点は、校注者の見解によった。   4 仮名には、適宜漢字を当て、もとの仮名は振り仮名の形で残した。   5 校注者による振り仮名は、( )に入れた。   6 反復記号は、原則として底本のままとしたが、仮名に置き換えまたは漢字を当てた時には、反復記号を振り仮名の位置に残した。   7 底本の本文を改めた場合は、その旨を脚注に記した。   8 底本の見せ消ち・補入・傍書などは、必要な場合のみ脚注に示した。   9 歌題・詞書・奥書などの中の漢文体表記には、適宜、返り点・送り仮名を付した。  三 人名・地名については、おおむね巻末の索引に一括して解説した。  四 本文の歌番号は、作品ごとの通し番号とした。  Note  「digital西行庵」の入力に際して  底本に近づけるため、振り仮名の部分を入力し、漢字は傍記した。  基本に忠実な翻刻に対してのみ行える処理である。  校注者の良識に感謝。  0001:異0074: なにとなくはるになりぬときく日         吉野3の1 より心にかゝるみよしのゝやま  0002:異0039:     花2 山さむみはなさくへくもなかりけり    兼1 あまりかねてもたつねきにける  0003:異0042: 吉野3 よしのやま人に心をつけかほに 花よりさきにかゝる白雲  0004:異0075:      花2 さかぬまのはなには雲のまかふとも 雲とは花のみえすもあらなん  0005:異0076:      春2 いまさらにはるをわするゝはなもあらし おもひ1 思のとめて今日もくらさん  0006:異0059:    こ1 白河の木すゑを見てそなくさむる 吉野3 よしのゝやまにかよふ心を  0007:異0050: おしなへてはなのさかりになりにけり 山のはことにかゝる白雲  0008:異0077: 吉野3 よしのやま木すゑのはなをみし日より 心は身にもそはすなりにき  0009:異0056: あくかるゝ心はさてもやまさくら        身1 ちりなんのちやみにかへるへき  0010:異0053: 花2 染1 はなにそむこころのいかてのこりけむ        おもふ1           身1 すてはてゝきと思わかみに  0011:異0052:        した1 死1 ねかはくは花の下にて春しなむ        望2 そのきさらきのもち月のころ  0012:異0057:        花2      わが1 仏にはさくらのはなをたてまつれ我 後2 のちの世を人とふらはゝ  0013:異0078: 勅3           お1 ちよくとかやくたすみかとのをはせか     お1   花2 しさらはをそれてはなやちらぬと  0014:異0102:     風2 浪もなくかせををさめし白河の 君のをりもや花はちりけん  0015:異0079: 風越4         咲1 かさこしのみねのつゝきにさく花は いつさかりともなくやちるらん  0016:異0080: 吉野3      岫2【さく花】 よしのやまかせこすくきにちるはなは 人のをるさへをしまれぬかな  0017:異0081: ちりそむるはなのはつ雪ふりぬれは        志賀2 【こえ】 ふみわけまうきしかのやまみち  0018:異0082: 春かせのはなのふゝきにうつもれて        志賀2 ゆきもやられぬしかのやまこえ  0019:異0083: 吉野3  谷2 よしのやまたにへたなひく白雲は みねのさくらのちるにやあるらん  0020:異0084:         雲2 たちまがふみねのくもをははらふとも はなをちらさぬあらしなりせは  0021:異0085: 木1          吉野3 このもとにたひねをすれはよしのやま はなのふすまをきする春かせ  0022:異0086: 峰2      谷2  木1 みねにちるはなはたになるきにそさく        春2 いたくいとはしはるのやまかせ  0023:      こ1 あたにちる木すゑのはなをなかむ   庭2   え1 れはにはにはきへぬ雪そつもれる  0024:異0087: 風2 かせあらみこすゑの花のなかれきて 庭2 にはになみたつ白河のさと  0025:異0088:     枝2 春ふかみえたもゆるかてちるはなは 風のとかにはあらぬなるへし  0026:異0090: 風2      ゆくへ2 かせにちるはなの行ゑはしらねとも をしむ心は身にとまりけり  0027:異0111:      を ちるはなをゝしむ心やとゝまりて     春2 またこんはるのたねになるへき  0028:異0103: 惜1 をしまれぬ身たにも世にはある物を あなあやにくのはなのこゝろや  0029:異0104:         お うき世にはとゝめをかしとはるかせの       を ちらすは花をゝしむなりけり  0030:異0109:          具1 もろともにわれをもくしてちりね 花2            身1 はなうき世をいとふこゝろあるみそ  0031:異0089: 思2     【なから】   【に】 をもへたゝはなのちりなんこのもとを    影2  わが1 なにをかけにて我身すみなん  0032:異0110:            馴1 なかむとて花にもいたくなれぬれは   わかれ1 ちる別こそかなしかりけれ  0033:異0091: なにとかくあたなるはなの色を        おもひ1 しも心にふかく思そめけん  0034:異0092:          へ1 花もちり人もみやこえかへりなは 山2 やまさひしくやならむとすらん  0035:異0093: 吉野3 よしのやまひとむらみゆる白雲は   お1 さきをくれたるさくらなるへし  0036:異0094: ひきかへて花みる春はよるはなく  みる1 月見【ん】秋はひるなからなん  Subtitle  月  0037:  八月十五夜 かそへねとこよひの月のけしき             (かな1) にて秋のなかはをそらにしる哉  0038:         夜1 秋はたゝこよひ一よの名なりけり お1 をなし雲井に月はすめとも  0039: さやかなるかけにてしるし秋の月 十夜2    五日3 とよにあまれるいつかなりけり  0040:        来1 うちつけにまたこむ秋のこよひまて   ゑ1 月ゆへをしくなる命かな  0041:       【月2】  くもりたりしとしの十五夜を 月まてはかけなく雲につゝまれて            え1 こよひならすはやみにみへまし  0042:  九月十三夜   え1 雲きへし秋のなかはのそらよりも       名1負1 月はこよひそなにをへりける  0043:       え1 こよひはと所へかほにすむ月の      菊2 光もてなすきくの白露  0044:  後九月に 月見れは秋くはゝれるとしはまた あかぬ心もそふにそありける  0045:         (はべり1)  月の歌あまたよみ侍しに      【は】 秋の夜のそらにいつてふ名のみして かけほのかなるゆふつくよかな  0046:      待1    お1 うふしとやまつ人ことにをもふらん 山のはいつる秋の夜の月  0047: あつまにはいりぬとひとやをしむらん 宮こにいつる山のはの月  0048:     て1      (みれ1) まちいてゝくまなきよひの月見は 雲そ心にまつかゝりぬる  0049: 播磨潟5 灘2  お1 はりまかたなたのみをきにこきいてゝ    お1 あたりをもはぬ月をなかめん  0050:      波2 わたのはらなみにも月はかくれけり 宮このやまをなにいとひけん  0051:      お1 岩戸3【出2】 あまのはらをなしいはとをいつれとも 光ことなる秋のよのつき  0052: ゆく1         き1 行すゑの月をはしらすすきゝ ぬる秋またかゝるかけはなかりき  0053: なかむるもまことしからぬ心地して 世にあまりたる月のかけかな  0054: 月のためひるとおもふかかひなき にしはしくもりてよるをしらせよ  0055: さためなく鳥やなくらん秋の夜は       おもひ1 月のひかりを思まかへて  0056:     明石3 瀬戸2風1ふけ1 月さゆるあかしのせとにかせ吹は こほりのうへにたゝむ白浪  0057: 清1み1 沖2    潟2 きよ見かたをきのいはこす白浪に 光をかはす秋の夜の月  0058: なかむれはほかのかけこそゆかしけれ          夜1月1 かはらしものを秋のよのつき  0059:         山2 人も見ぬよしなきやまのすゑまても すむらん月のかけをこそ思へ  0060:             風2 身にしみてあはれしらするかせより         あり1 も月にそ秋の色は有ける  0061:     天2 秋かせやあまつ雲井をはらふらん   ゆく1 ふけ行まゝに月のさやけき  0062: なか/\にくもるとみえてはるゝ夜の 月はひかりのそふ心ちする  0063: よもすから月こそ袖にやとりけれ       おもひ1 むかしの秋を思いつれは  0064: つきを見て心うかれしいにしへの 秋にもさらにめくりあひぬる  0065: いつくとてあはれならすはなけれとも 荒1 あれたるやとそ月はさひしき  0066: ゆくへ1 行【へ】ゑなく月に心のすみすみて はてはいかにかならんとすらん  0067: なか/\に心つくすもくるしきに くもらはいりね秋の夜の月  0068:            入1 水のおもにやとる月さへいりぬるは 浪のそこにもやまやありける  0069: 有明の月のころにしなりぬれは 【なからへすはと思ひなるかな】 秋はよるなき心ちこそすれ  0070:    世1 いとふよも月すむ秋になりぬれは     【とは】 なからへすはと思ひなるかな  0071:     【ら】 ゆく1 何事もかはりのみ行世の中に お1 をなしかけにてすめる月かな  0072:         知1 世の中のうきをもしら【れ】てすむ月 のかけはわか身の心地こそすれ  0073:  恋 ゆみはりの月にはつれてみしかけの やさしかりしはいつかわすれん  0074: しらさりき雲井のよそにみし           【る】 月のかけをたもとにやとすへしとは  0075: 月まつといひなされつるよひのまの こゝろの色を袖にみえぬる  0076:      みる1 あはれとも見人あらはおもはなん   お1 月のをもてにやとす心を  0077:   け なけゝとて月やはものを思はする        わか1 かこちかほなる我涙かな  0078: おもひしる人有明のよなりせは つきせす身をはうらみさらまし  0079: かすならぬ心のとかになしはてし しらせてこそは身をもうらみめ  0080: あやめつゝ人しるとてもいかゝせむ        袂3 しのひはつへきたもとならねは  0081: 今日こそは気色を人にしられぬれ さてのみやはと思ふあまりに  0082:   憂1         わ1 身のうさの思ひしらるゝことはりに お1 をさへられぬはなみたなりけり  0083:   お1 ものをもへはそてになかるゝ涙かは           あり1 いかなるみをにあふせ有なん  0084: けさよりそ人の心はつらからてあけ はなれぬるそらをうらむる  0085: きえかへりくれまつそてそしほれ   お1    露2 ぬるをきつる人はつゆならねとも  0086: ことつけてけさのわかれはやすらはん しぐれ2 時雨をさへやそてにかくへき  0087:             お1 【を】 あふまてのいのちもかなとをもひしは        わか くやしかりける我心かな  0088:      逢1 なか/\にあはぬ思ひのまゝならはうらみ     身1 はかりやみにつもらまし  0089:      結2 ほ1 さらにまたむすほゝれゆくこゝろかな 解1     おもひ1 とけなはとこそ思しかとも  0090: むかしよりものおもふ人やなからまし 心にかなふなけきなりせは  0091: 夏草のしけりのみゆく思ひかな またるゝ秋のあはれしられて  0092: あはれとてとふ人のなとなかるらん         荻2 上風4 ものおもふやとのをきのうはかせ  0093:             しくれ1 くれなゐのいろにたもとの時雨つゝ そてに秋ある心ちこそすれ  0094: けふそしる思ひいてよとちきりしは わすれんとてのなさけなりけり  0095:             大海4 日にそへてうらみはいとゝおほうみ のゆたかなりけるわかなみたかな  0096: 難波潟5 なにはかたなみのみいとゝかすそひて     干1    わ【ぬ】 うらみのひはや袖のかはかん  0097:            【ら】            脚2 日をふれはたもとの雨のあしそひて はるへくもなきわかこゝろかな  0098:          脚繁4 かきくらす涙の雨のあしゝけく       の さかりにものゝなけかしきかな  0099: いかにせんそのさみたれのなこり よりやかてをやまぬ袖のしつくを  0100: さま/\におもひみたるゝ心をは君か     束2 もとにそつかねあつむる  0101:        咎2  お1 身をしれは人のとかともをもはぬ にうらみかほにもぬるゝ袖かな  0102: 人はうしなけきはつゆもなくさ ますさはこはいかにすへき心そ  0103:      おほ2 かゝる身ををゝしたてけんたらちね  お1 のをやさへつらき恋もするかな  0104: とにかくにいとはまほしき世なれと も君かすむにもひかれぬるかな  0105:   お1 ものをもへともかゝらぬ人もあるものを          ちきり1 あはれなりける身の契かな  0106: むかはらはわれかなけきのむくひにて    ゑ1 たれゆへ君かものを思はん  0107: あふと見しそのよの夢のさめて    長2 あれななかきねふりはうかるへけれと  0108: あはれ/\この世はよしやさもあらはあれ 来1世1 こむよもかくやくるしかるへき  Subtitle  雑上  0109: なにとなくせりときくこそあはれ つみけん人の心しられて  0110:      お1 はら/\とをつる涙そあはれなるた      の1 まらすものゝかなしかるへし  0111: わひ人のなみたににたるさくらかな   身1 かせみにしめはまつこほれつゝ  0112: 吉野3         おもふ1 よしのやまやかていてしと思身を はなちりなはとひとやまつらん  0113:      木1葉1お1 こからしにこのはのをつる山さとは涙 さへこそもろくなりけれ  0114:         おもふ1 つく/\とものを思にうちそへてを       鐘2 お1 りあはれなるかねのをとかな  0115:          鐘2 お1 暁のあらしにたくふかねのをとを こゝろのそこにこたへてそきく  0116: 訪1  お1  え1 とふ人もをもひたへたる山さとの        住2 さひしさなくはすみうからまし  0117: 谷2 底2     松2 たにのそこにひとりそまつも たてりけるわれのみともはなきかと思へは  0118: 松風4  お1 まつかせのをとあはれなるやまさとに さひしさそふる日くらしのこゑ  0119:     谷2 筧3   え1 山さとはたにのかけひのたへ/\に    鳥2 水恋とりのこゑきこゆなり  0120: 古畑4     立1木1 ふるはたのそはのたつきにゐる 鳩2      ゑ1 はとのともよふこえのすこきゆふくれ  0121:  熊野3の1   お1      浜木綿4 みくまのゝはまゆふをふるうらさひ         年2 てひとなみ/\にとしそかさなる  0122:            世1 いそのかみふるきをしたふよなり せはあれたるやとに人すみなまし  0123:        世1 ふるさとは見しよにもにすあせに けりいつちむかしの人ゆきにけん  0124: 風2ふけ1  破1ゆく1           芭蕉葉4 かせ吹はあたにやれ行はせをはの             世1 あれはと身をもたのむへきよか  0125:      入相4  鐘2 お1 またれつるいりあひのかねのをとす なりあすもやあらはきかんとすらん  0126: 入日3 いりひさす山のあなたはしらねとも        お1 お1 こゝろをかねてをくりをきつる  0127: 柴2 庵2 しはのいほはすみうき事も あらましをともなふ月のかけなかりせは  0128: わつらはて月にはよるもかよひけり        畦2 細道4 となりへつたふあせのほそみち  0129:               稲葉3 光をはくもらぬ月そみかきけるいな      朝日子4 はにかゝるあさひこのたま  0130:      端山3   漏1 かけきえてはやまの月はもりもこす 谷2 こ1  雪2  え1 たには木すゑのゆきとみへつゝ  0131:    越1   木1 あらしこすみねのこのまをわけき   谷2 清1 つゝたにのし水にやとる月かけ  0132: 月をみるほかもさこそはいとふらめ       空2 雲たゝこゝのそらにたゝよへ  0133: 雲2 くもにたゝこよひは月をまかせ                ゑ1 てんいとふとてしもはれぬものゆへ  0134:   春2 くるはるはみねにかすみをさきたてゝ 谷2 筧3 たにのかけひをつたふなりけり  0135: 小芹3  沢2 こせりつむさはのこほりのひまた   春2     桜3   里2 えてはるめきそむるさくら井のさと  0136: 春2          風2 はるあさみすゝのまかきにかせさ  【夫】雪2き1 信楽4  里2 えてまたゆきゝえぬしからきのさと  0137: 春2 はるになるさくらのえたはなにとな く花なけれともむつましきかな  0138:      羽風3 すきてゆくはかせなつかしうく           梅2 立枝3 ひすよなつさひけりなむめのたちえに  0139:          谷2 うくひすはゐなかのたにのすなれ       音1 ともたひたるねをはなかぬなりけり  0140: はつ花のひらけはしむるこすゑより     風2 そはえてかせのわたるなるかな  0141: お1 をなしくは月のをりさけ山さくら 花2みる1    夜2 はな見よるのたえまあらせし  0142: 空2         吉野山5 そらはれて雲なりけりなよしのやま       風2 花もてわたるかせとみたれは  0143:            世1 はなちらて月はくもらぬよなりせは    お1 ものををもはぬわか身ならまし  0144:      汲1 なにとなくくむたひにすむこゝろかな 岩2 いは井の水にかけうつしつゝ  0145: 谷風4         入1 たにかせは戸をふきあけている           窓2 ものをなにとあらしのまとたゝくらん  0146: 番2 つかはねとうつれるかけをともに   鴛鴦 してをしすみけりな山かはの水  0147: お1   岩2     霰3 をとはせていはにたはしるあられこそ 蓬3  窓2 よもきのまとのともになりけれ  0148: 熊2   苔2 岩山4 お1 くまのすむこけのいはやまをそろしみ むへなりけりな人もかよはぬ  0149: 里2  大幣4 小幣3立1並1 さと人のおほぬさこぬさたてなめて 馬形4    野1子1 むまかたむすふのつこなりけり  0150:            蓼2 穂1 くれなゐの色なりなからたてのほの       目1 立1 からしや人のめにもたてぬは  0151: 楸3 生1 涼2     蔭2     ひ1 ひさきおいてすゝめとなれるかけな   波2  岸2 風2 れやなみうつきしにかせわたりつゝ  0152: おりかくる浪のたつかとみゆるかな すさきにきよるさきのむらとり  0153: 浦2   枯1    木1 うらちかみかれたる松のこすゑには 浪2 お1  風2 【る】 なみのをとをやかせはかくらん  0154: 潮風4  伊勢2浜荻4 しほかせにいせのはまをきふせは   穂1 まつほすゑを浪のあらたむる哉  0155: さもとゆくふなひといかにさむからん 熊山岳6  お1  嵐3 くまやまたけををろすあらしに  0156:      伊吹3    風先4 おほつかないふきおろしのかさゝき  朝妻船6 にあさつまふねはあひやしぬらん  0157: いたけもるあまみか時になりにけり 蝦夷2千島3 えそかちしまをけふりこめたり  0158:      馴1     お1 た1 ものゝふのならすすさみはをもたゝし     退2 鴨2 入1首2 あけそのしさりかものいれくひ  Subtitle  春  0159:  はつはるのあしたに      春2 知1 たちかはるはるをしれともみせかほ  年2     霞3 にとしをへたつるかすみなりけり  0160:   里2 春立3  山さとをはるたつといふ事を 春知3  谷2 細水4 はるしれとたにのほそみづもりそくる 岩間3 氷隙5   え1 いはまのこほりひまたへにけり  0161:     霞3       伊勢2  海辺のかすみといふことをいせ   二1  まうす1  のふた見と申所にて  越1 二見3 松2 浪こすとふたみのまつのみえつるは        霞3 こすゑにかゝるかすみなりけり  0162:  子1日1  ねのひ 春2   野辺2 はることにのへの小松をひく人は     千代2経1 いくらのちよをふへきなるらん  0163:     若菜3  雪中のわかな      お1 けふはたゝをもひもよらでかへりなん 雪2  野辺2若菜3 ゆきつむのへのわかなゝりけり  0164:     若菜3  雨中のわかなを 春雨4     の1  おひ2          若菜3 はるさめのふるのゝわかなをいぬらし        *3 ぬれ/\つまんかたみたぬきれ  0165:  若菜3 初子3 合1  わかなにはつねのあひたりしに人の     まうし1はへり1      お1  もとへ申をくり侍し 若菜3     初子3 わかなつむけふにはつねのあひぬれは まつにや人の心ひくらん  0166:  若菜3 寄1    陳1  わかなによせて思ひをのふといふ事を 若菜3お1   野守3 わかなをふる春ののもりにわれなりて うき世を人につみしらせはや  0167:  住1はべり1      声2      谷2  すみ侍したににうくいすのこえ  せすなりしかはなにとなくあは  れにおほえて 古巣2   谷2 ふるすうとくたにのうくいすなり 果1 はてはわれやかはりてなかむとすらん  0168:  梅2         を1  むめにうくいすのこゑかほりて     はべり1  きこえ侍しに 梅2 香1 むめかかにたくへてきけはうくいすの こゑなつかしき春のあけほの  0169:  旅2 泊3  梅2  たひのとまりのむめを    寝1         香1 ひとりぬる草のまくらのうつりかは 垣根3 梅2 かきねのむめのにほひなりけり  0170:  嵯峨2住1はべり1道2  さかにすみ侍しをりみちをへた    坊2       梅2  ててはうのはへりしよりむめの  風2  かせにちりこしを      風2 ぬしいかにかせわたるとていとふらん        梅2 よそにうれしきむめのにほひを  0171:  きゝす おひ2  春2 若草4 をいかはるはるのわかくさまちわひて 原2 枯野1 はらのかれのにきゝすなくなり  0172:      若菜3 もへいつるわかなあさるときこゆなり きゝすなくなる春のあけほの  0173:  霞3  中2帰2 雁2  かすみのうちかへるかりといふ事を             天2 原2 なにとなくおほつかなきはあまのはら 霞3 かすみにきえてかへるかりかね  0174:  帰2      はべり1  かへる雁の歌よみ侍しに      端書4 たまつさのはしかきかともみゆるかな   お1 とひをくれつゝかへるかりかね  0175:  柳3 風2 随3  やなきかせにしたかふ      佐保2河原3 みはたせはさほのかはらにくりかけて 風2 縒1  青柳4 かせによらるゝあをやきのいと  0176:  山里4  柳3  やまさとのやなきといふことを 山賤4  片岡4 やまかつのかたをかかけてしむる 野1  ひ1   玉2 小柳4 ののさかゐにみゆるたまのをやなき  0177:        花2 お1  つとめて山のはなにをもむく  【に】  といふことを      霞3  暮1  路1 さらにまたかすみにくるゝ山ち   【る】   花2 かなはなをたつぬる花のあけほの  0178:  独3    尋2  ひとり山花をたつぬといふ事を      花2     吉野山5 たれかまたはなをたつねてよしの   苔2      は1 やまこけふみふくるいわつたふらん  0179:    花2 尋2  見1  山のはなをたつねてみる  といふ事を 吉野山5       尋2 よしのやま雲をはかりにたつね         花2 いりて心にかけしはなをみるかな  0180:  熊野3  ゐ1  八上3  くまのへまいりしにやかみの  若2     お1  わ(か)宮の花をもしろかりしかは        はへり1  社にかきつけ侍し 待1   八上3 まちきつるやかみの桜さきにけり    お1  三栖2 あらくをろすなみすの山かせ  0181:  上西門院女房法勝寺の花みられし             帰2  に雨ふりてくれにしかはかへられ       日1   局3  にきまたのひ兵衛殿のつほねのもとへ花の     思2     たまふ1  みゆきおもひいてさせ給らんとおほえ  はへり1お1  侍しとてをくり侍し みる1花2 昔3       て 見人にはなもむかしをおもひいてゝ       雨2 恋しかるへしあめにしほるゝ  0182:  かへし          雨2    見1 いにしへをしのふるあめとたれかみん 花2   世1友2 はなもそのよのともしなければ  若2          老1  わかきひと/\はかりなんをいにける    風2        厭2  身はかせのわつらはしさにいとはるゝ  ことにてとありしいとやさしく侍き  0183:       みる1  花の下にて見月といふ心を 雲2 紛2 花2 した1 くもにまかふはなの下にてなかむ れはおほろに月もみゆるなりけり  0184:  老1 花2  をいてはなをみるといふ事を 老1 おいつとになにをかせましこの 春2 花2 はるのはなまちつけぬわか身なりせは  0185:  古2        咲1  ふる木の桜はな所/\さきたる  を見て    見1老2  花2 わきてみんをい木ははなもあはれなり        春2 いまいくたひかはるにあふへき  0186:    絶1 言問3  かきたえてこととはすなりた      花2   里2  りし人のはな見に山さとへ  詣1     聞き2  まてきたりしときゝて 年2 経1お1 こ1 としをへてをなし木すゑにに     花2 ほへともはなこそ人にあかれさりけれ  0187:  世1遁2  東山6  よをのかれてひむかしやまに  住1はべり1白河4  花2  すみ侍しころしらかはのはな  盛2         罷2  さかりに人さそひしかはまかりて  帰2  かへるとて  昔3      て  むかしおもひいてゝ 散1 ちるを見てかへる心やさくらはな 昔3 むかしにかはるこゝろなるらん  0188:  早蕨4  さわらひ  ほ1  焼1   野の2 なをさりにやきすてしのゝさわらひ  折1 はをる人なくてほとろとやなる  0189:           【り】  やまふき家のかさりたいといふ  事を 山吹4  花咲3 里2 やまふきのはなさくさとになり        井手2 ぬれはこゝにもいてとおもほゆるかな  0190:  蛙3  かはつ 真菅3お1 荒田3 ますけをふるあらたに水をまか       顔2 すれはうれしかほにもなくかはつかな  0191:       郭公5   聞1  春のうちにほとときすをきくといふ  ことを      思2 うれしともおもひそはてぬほとゝ   春2聞1   慣1 きすはるきくことのならひなけれは  0192:      足1 暮1はべり1  三月一日たらてくれ侍しに 春2 ゑ1 はるゆへにせめてもものを思へ   三十日3   足1 暮1 とやみそかにたにもたらてくれぬる  0193:   里2 初3  山さとのはしめの秋といふ事を             木1 さま/\のあはれをこめてこすゑ   風2  知1 山2  里2 ふくかせに秋しるみやまへのさと  0194:  秋の歌に 玉2 貫1露2     武蔵3 たまにぬくつゆはこほれてむさし 野の2      秋2 初風4   草2 のゝくさの葉むすふあきのはつかせ  0195:  初3      鳴尾3 まうす1  はしめの秋のころなるをと申す     松2 風2 音2 聞き2  所にてまつのかせのをとをきゝて            松風4 つねよりも秋になるをのまつかせ             あり1 はわきて身にしむものにそ有ける  0196:  七夕4  たなはた      【き】 船2   天2 川瀬3 ふねよするあまのかはせのゆふ        風2 ふき1 くれはすゝしきかせや吹わたすらん  0197:   ノ  野径秋風   葉1 風2 野1   【る】 すゑはふくかせはのもせにわたれとも 荒2  分1 萩2  露2 あらくはわけしはきの下つゆ  0198:    ルヲ  草花遮道といふ事を    レ ゆふつゆをはらへは袖にたまきえて        【ゝ】       小野2萩原4 道わけかぬるをののはきはら  0199:   ノ  行路草花 折1   袖2  露2 をらてゆくそてにもつゆそしほ    萩2     野路2細道4 れけるはきの葉しけきのちのほそみち  0200:          【り】     道2 当1    繁2  すゝきみちにあた(つ)てしけしと  いふことを はなすゝき心あてにそわけてゆく     道2 ほのみしみちのあとしなけれは  0201:    ルニ  野萩似錦といふことを    レ    知1  江1洗2 唐2 けふそしるそのえにあらふから 錦3 萩咲3 野辺2あり1 にしきはきさくのへに有けるものを  0202:    前2 野1  花2  月のまへのの(の)はなといふ事を 花2           秋2 夜1 はなのいろをかけにうつせはあきのよの   野守3 鏡3 月そのもりのかゝみなりける  0203:  女郎花5 露2  をみなへしつゆをおひたりといふ  ことを 花2 柄1露2  玉2貫1 はなのえにつゆの白たまぬきかけて 折1袖2 をるそてぬらすをみなへしかな  0204:   へん1     女郎花5  水辺のをみなへし      花2 たくひなきはなのすかたををみなへし 池2 鏡3  映2   みる1 いけのかゝみにうつしてそ見  0205:    前2 女郎花5  月のまへのおみなへしを 庭2 にはさゆる月なりけりなをみなへし 霜 しもにあひぬる花とみたれは  0206:     野1  秋の興のにありといふ事を 花2    野辺2   見1来1 はなをこそのへのものとはみにき   暮1  虫2 音1 聞き2 つれくるれはむしのねをもきゝけり  0207:  たのいへの2  田家虫を 小萩3咲1山田3 畦2 虫2 こはきさくやまたのくろのむしの   庵守3 ねにいほもる人や袖ぬらすらん  0208:      虫2聞1  ひとりむしをきくといふ事を       【に】      友2 ひとりねのともとはならてきり/\す 【し】      おもひ1 なくねをきけはもの思そふ  0209:     【も】  年頃4 申2  としころまうしなれたりし人  伏2  住1    尋2  ふし見にすむときゝてたつね   罷2     庭2 草2  てまかりたりしににはのくさ    見1 繁2  虫2  道もみえすしけりてむしの    はへり  なき侍しかは 分1 入1袖2 わけているそてにあはれをかけよ   露2  庭2 虫2   啼1 とてつゆけきにはにむしさへそなく  0210:  むし  風2 穂末3    刈萱4 秋かせにほすゑなみよるかるかやの  葉1虫2  ゑ1         乱2 下はにむしのこえみたるなり  0211: 夜1   袂3  虫2 よもすからたもとにむしのねを かけてはらひわつらふ袖の白露  0212: 虫2   露2     袂3 むしのねにつゆけかるへきたも             おもふ1 とかはあやしやこゝろもの思へし  0213:   初雁4  聞1  暁はつかりをきく 横2  風2 分1 よこ雲のかせにわかるゝしのゝめに 山飛3 やまとひこゆるはつかりのこゑ  0214:  遠2 近2 雁2 聞1  とをくちかくかりをきく           ゆく1            雁2 白雲をつはさにかけて行かりの 門田3 面2 友2 かとたのをものともしたふなり  0215:  夜1入1 雁2 聞1  よにいりてかりをきく 烏羽4  書1 からすはにかくたまつさの心ちして 雁2     夕闇4  空2 かりなきわたるゆふやみのそら  0216:  霧2 中2 鹿2  きりのうちのしか      深山3 霧2 はれやらぬみやまのきりのたえ/\に     鹿2  ゑ1 ほのかにしかのこえきこゆなり  0217:  夕暮4    聞1  ゆふくれに鹿をきくといふ事を 篠原4  霧2     鳴1鹿2 しのはらやきりにまかひてなくしかの  ゑ1 こえかすかなる秋の夕くれ  0218:    鹿2  暁のしかを 夜1残2 寝覚3 よをのこすねさめにきくそあはれなる 夢野3 鹿2    鳴1 ゆめののしかもかくやなきけん  0219:     鹿2  【心】  田家のしかといふ事を 小山田4 庵2   鳴1鹿2 をやまたのいほちかくなくしかの   お1     お1 ねにをとろかされてをとろかすかな  0220:   里2 鹿2  山さとのしか      住1ま1 なにとなくすまゝほしくそおもほ            山里4 ゆるしかあはれなる秋のやまさと  0221:   待1  鹿2 聞1  月をまちてしかをきくと  いふ事を           澄1 かねてより心そいとゝすみのほる  待1峰2  牡鹿3 月まつみねのさをしかのこゑ  0222:  たのうへの2  田上月を 夕露4  玉2敷1小田2稲2 ゆふつゆのたましくをたのいな 筵3 【け】穂末3 むしろかふすほすゑに月そやとれる  0223:    前2 遠2 望2  月のまへにとをくのそむといふ事を            誘2 くまもなき月のひかりにさそは          【かな】   幾2    ゆく1   れていく雲井まて行心そも  0224:  春日3  ゐ1 はべり1明2  かすかにまいりて侍しに月あか        三笠3 山2  くあはれにてみかさのやまをみや  りてよみはへりし        【に】          知1 ふりさけし人の心そしられぬる    三笠3 こよひみかさの月をなかめて  0225:  遍照寺5  へんせうしにて人/\月をもて  あそひはへりしに 池2 お1 いけのをもにうつれる月のうき雲         水錆3 ははらひのこせるみさひなりける  0226:  讃岐3 善通寺5  山2  さぬきのせんつうしのやまにて  海2  うみの月を見て         海2 くもりなき山にてうみの月みれは 島2 氷3  絶1 しまそこほりのたえまなりける  0227:      散1  月の前のちる葉  お1    木1葉1 山をろしの月にこのはをふきかけて ひかりにまかふかけをみるかな  0228:       はへり1  秋の歌よみ待しに 鹿2 音1垣根3    聞1 しかのねをかきねにこめてきく             里2 のみか月もすみけり秋の山さと  0229: 庵2 漏1 いほにもる月のかけこそさひし   山田3 引板2お1 けれやまたはひたのをとはかりして  0230: なに事をいかにおもふとなけれと  袂3       夕暮4 もたもとしくるゝ秋のゆふくれ  0231: なにとなくものかなしくそ見え    鳥羽田3面2   夕暮4 わたるとはたのをもの秋のゆふくれ  0232:      露2 おほかたのつゆにはなにのなるならん 袂3  お1 たもとにをくは涙なりけり  0233:              知1 山さとは秋のすゑにそおもひしる        こ1 かなしかりけり木からしのかせ  0234:     罷2  道2  ものへまかりしみちにて             知1 こゝろなき身にもあはれはしられ   鴫立3 沢2    暮2 けりしきたつさはの秋のタくれ  0235:  独3  擣1 聞1  ひとり衣うつをきく    寝1夜寒3    重2 ひとりねのよさむになるをかさねはや      擣1衣3 たかためにうつころもなるらん  0236:  山里のもみちといふ事を 染1 そめてけりもみちの色のくれなゐ  時雨2     山辺3 里2 をしくるとみえしみやまへのさと  0237:        ゐ1 ふかきやまのもみち4  寂然高野にまいりて深山紅葉  といふことを宮法印御庵室にて      まうしはへり2           ゐ1  よむへき申侍しにまいりあ  ひて      錦3 さま/\のにしきありけるみ山かな 花2 はな見しみねをしくれそめつゝ  0238:  秋のくれに   【な】     【を】             尽1 なにとかくこゝろをさへをつくすらん   嘆2   暮1 秋1 わかなけきにてくるゝあきかは  0239:         惜1  よもすから秋をゝしむといふ事を  北白河にて を1   鐘2 お1 おしめともかねのをとさへかはるかな 霜2  露2 結2 しもにやつゆをむすひかふらん  0240:             散1  卯月のついたちになりてちりて  後2花2 おもふ1  のちはなを思という事を人々  よみはへりしに 青葉3            散2 あをはさへみれは心のとまるかなちり   花2     思2 にしはなのなこりとおもへは  0241:       はへる1  夏の歌よみ侍とて 草2    刈2 くさしける道かりあけて山さとは 花2 はなみし人のこゝろをそみる  0242:  社頭4  卯1  しやとうのうの花 神垣4 かみかきのあたりにさくもたより    木綿2       卯1 あれやゆふかけたりとみゆるうのはな  0243:  無言3 はへり1    【に】  むこんし侍しころほとゝきす    ゑ1  のこえをきゝて ほとときす2    【は】 郭公ひとにかたらぬをりにしも 初音3 はつねきくこそかひなかりけれ  0244:  夕暮4  ゆふくれのほとゝきす 里馴3 さとなるゝたそかれときのほとゝきす 聞1 きかすかほにてまたなのらせん  0245:        待1        【ちて】  ほとゝきすをまつにむなしく  明1  あけぬといふことを      聞1 明1  告1 ほとゝきすきかてあけぬとつけ    待1  鷄2 音1 かほにまたれぬとりのねそきこゆなる  0246:          はへり1  郭公歌あまたよみ侍し中に      聞1    ゑ1 ほとゝきすきかぬものゆへまよは   花2 尋2   路1 ましはなをたつねし山ちならすは  0247: ほとゝきすおもひもわかぬひとこゑ をきゝつといかゝ人にかたらん  0248:         【しら】 聞きお3     具1 きゝをくるこゝろをくしてほとゝきす 高間3 山2 峰2 たかまのやまのみねこえぬなり  0249:  雨のうちのほとゝきす      晴2間1    路1 さみたれのはれまもみえぬ雲ちより       鳴1 過1 山ほとゝきすなきてすくなり  0250:  五月雨4    はへり1  さみたれの歌よみ待し中に     聞き古3   勝間田4 水なしときゝふるしてしかつまた  池2          頃2 のいけあらたむるさみたれのころ  0251:            打2橋2 さみたれに水まさるへしうちはしや 蜘蛛手3      糸2 くもてにかゝる浪の白いと  0252:  花2  花2 寄1 旧2  はなたちはなによせてふるきを  懐2  おもふといふ事を 軒2    橘4    染1 のきちかき花たちはなに袖しめて むかしをしのふ涙つゝまん  0253:  ノノノ  海辺夏月 露2   蘆2 若葉3   え1 つゆのほるあしのわかはに月さへ  秋2     難波江4 浦2 てあきをあらそふなにはへのうら  0254:  納涼の歌        【け】  山2 夕2    涼2 夏やまのゆふ下かせのすゝしさ 楢2  こ1 にならの木かけのたゝまうきかな  0255:  雨2 後2  あめのゝちの夏の月           宿2 夕たちのはるれは月そやとりける 玉揺3  う1蓮2 浮葉3 たまゆりすふるはすのうきはに  0256:  泉3  対2  いつみにむかひて月をみるといふ  ことを 掬2 手1 むすふてにすゝしきかけをそふる     【せ】   清1      夜1 かなし水にやとる夏のよの月  0257:    【を】   ノ  夏野草      原2 みまくさにはらのすゝきをしかふとて    【け】 臥1     鹿思4 ふしとあせぬとしかをもふらん  0258:  旅2 道2 草2深2  たひのみちにくさふかしといふ事を 旅2  分1  野の草4 たひ人のわくる夏のゝくさしけみ 葉1  菅2 小笠3 はすゑにすけのをかさはつれて  0259:   里2   侍1  山さとに秋をまつといふ事を  里2 外面3 真葛3葉1茂2 山さとはそとものまくすはをしけ  裏2ふき1 秋2 待1 みうら吹かへすあきをまつかな  0260:    初2     里2 罷2  十月はしめのころ山さとにまかり            声2  たりしにきり/\すのこゑわつかに   はへり1  し侍しかは 霜2埋2 葎3 しもうつむゝくらの下のきり/\す          聞1 あるかなきかのこゑきこゆなり  0261:    散1葉1  暁のちるは しぐれ2寝覚2 床2 時雨かとねさめのとこにきこゆるは 嵐3  絶1 木1 あらしにたえぬこの葉なりけり  0262:        枯1  水のほとりのかれたる草 霜2 しもにあひて色あらたむる 蘆2 穂1       難波江4 浦1 あしのほのさひしくみゆるなにはへのうら  0263:  閑2     ノ  しつかなる夜の冬月といふ事を 霜2   庭2 木1葉1踏1 しもさするにはのこのはをふみ      見1  訪1 わけて月はみるやととふ人もかな  0264:  【け】  夕暮4  千鳥3  ゆふくれのちとり 淡路島5 瀬戸2潮干3 あはちしませとのしほひのタくれ  須磨2 通2 千鳥3 にすまよりかよふちとりなくなり  0265:  寒2   千鳥3  さむき夜のちとり           聞き明3 さゆれとも心やすくそきゝあかす  【は】 河瀬3 鳥2友2具1 かせの千とりともくしてけり  0266:  舟2 中2 霰3  ふねのうちのあられ 瀬戸2  棚無4 小舟3 せとわたるたなゝしをふねこゝろ   霰3 せよあられみたるゝしまきよこきる  0267:          はへる1  冬の歌あまたよみ侍とて    【ふ】 花2 枯1    散1 山2 はなもかれもみちもちりぬやま 里2        とふ1 さとはさひしさをまた問人もかな  0268: 玉懸3  花2     衰3 たまかけしはなのすかたもをとろ へ1霜2 えぬしもをいたゝくをみなへしかな  0269:      片山陰6   友2 ひとりすむかたやまかけのともな   嵐3       夜1 れやあらしにはるゝ冬のよの月  0270: 津1国2 蘆2 丸屋3 つのくにのあしのまろやのさひし         訪1 さは冬こそわきてとふへかりけれ  0271:     初2 降1 咲1 山さくらはつ雪ふれはさきにけり   【 】 吉野3 里2 よしのはさとに冬こもれとも  0272:      嵐3  山2 風2 よもすからあらしのやまにかせさへ  大2  淀2 氷3   敷1 ておほ井のよとにこほりをそしく  0273:  里2 山さとはしくれしころのさひしさ  霰3  お1 にあられのをとはやゝまさりけり  0274: 風2 え1寄1 かせさへてよすれはやかてこほりつゝ    波2  志賀2唐崎4 かへるなみなきしかのからさき  0275: 吉野山5        雪2 よしのやまふもとにふらぬゆきならは 花2     尋2 入1 はなかとみてやたつねいらまし  0276:        まうす1  雪の朝両山と申所にて人/\     はへり1  歌よみ侍しに *1   朝日3 たけのほるあさひのかけのさす         消1 消1 まゝに宮この雪はきえみきえすみ  0277:      【の】【く】  山里4   深2  やまさとに冬ふかしといふ事を 訪1  初雪4    分1 とふ人もはつゆきをこそわけこしか 道閉3     山2  里2 みちとちてけりみやまへのさと  0278:   遁2        はへり1  世のかれてひむかし山に侍しに         歳2 暮2 寄1  人/\まてきてとしのくれによせて  おもひ1    述1  思をのへしに 歳2暮1        忘2 としくれしそのいとなみはわすられて あらぬさまなるいそきをそする  0279:  歳2 暮2 高野3  としのくれにかうやより宮こ      まうし1 はへり1  なる人に申つかはし侍し お1         過1 をしなへておなし月日のすき          歳2 暮2 ゆけは宮こもかくやとしはくれぬる  Subtitle  雑下 八十三首  0280:  いはひの歌よみはへりし中に 若葉2  平野の4松2 わかはさすひらのゝまつはさらにまた 枝2 八千代3数2 えたにやちよのかすをそふらん  0281: 君か世のためしになにを思はまし     松2 かはらぬまつの色なかりせは  0282:  内裏2貝合5  うちにかいあはせあるへかりしに人に  かはりて  ひ1     袖2 かいありな君かみそてにおほはれて            世 こゝろにあはぬ事もなきよは  0283:  ふけ1 風吹ははなさく浪のをるたひに    貝2  三島江4 浦2 さくらかひよるみしまえのうら  0284: 浪2     浦2  貝2 なみあらふ衣のうらの袖かひを     風2    お1 みきはにかせのたゝみをくかな  0285:             日1  承安元年六月ついたちのひ院  熊野3  ゐ1 お1  くまのへまいらせをはしましける      住吉4  ついてにすみよしへ御幸ありけ   修2  りしゆ行しまはりて二日かの  社3   ゐ1 はへり1             住2 江1  やしろにまいりて侍しにすみのへ   釣2      仕立2  【る】  のつり殿あたらしくしたてられたり     【入】       たまふ1  後三条院のみゆき神思ひいて給らん        書1 はへり1  とおほえてかきつけ侍し 絶1         待1 たえたりし君かみゆきをまちつけて 神いかはかりうれしかるらん  0286:     【た た】  松2 下枝3  まつのしつえをあらひけん浪       変1  いにしへにかはらすこそはとおほえて      松2 下枝3 いにしへのまつのしつえをあらひけ  浪2 むなみを心にかけてこそ見れ  0287:    天王寺5  籠2  俊恵てんわうしにこもりて人/\  具1 住吉3   ゐ1    はへり1  くしてすみよしにまいりて歌よみ侍し  に        根1  波2 すみよしの松のねあらふなみの お1 こ1     沖2 潮風4 をとを木すゑにかくるをきつしほかせ  0288:  そのかみこゝろさしつかまつりし      世1遁2  ならひによをのかれてのちも  賀茂2社3   ゐ1  かものやしろへまいることにて    年2高2       方2  なんとしたかくなりて四国のかた          帰2  ゐ1  へ修行すとてまたかへりまいらぬ  ことにてこそはとて仁安二年十月       ゐ1 幣2 ゐ1 はへり1  十日の夜まいりてへいまいらせ侍  内1  入1      棚尾3  うちへもいらぬことなれはたなうの  社3       奉4  やしろにとりつきてたてまつり             木1間1  たまへとて心さし侍しにこのま  の月ほの/\につねよりも神さひ          詠1  あはれにおほえてよみ侍し かしこまるしてに涙のかゝるかなまた       【う】      思2 いつかはとをもふあはれに  0289:    お1  たまひ1  斎院をりさせ給て本院のまへ   過1はへり1       を1  をすき侍しおりしも人のうちへ  入1  いりしにつきてゆかしくはへりしかは  見まはりておはしましけんを          【 】            変1  りはかゝらさりけんとかはりにける              宣旨3  ことからあはれにおほえてせんしの  局3     申2 送2  つほねのもとへまうしをくり侍し     御内3    有栖3 君すまぬみうちはあれてありす 川2忌1姿3 かはいむすかたをもうつしつるかな  0290:  返2  かへし      忌1 おもひきやいみこし人のつて    馴1 御内3 聞1 にしてなれしみうちをきかんものとは  0291:            勘当4  ゆかりなる人の新院のかんとうなり    許2       まうし1  しをゆるしたふへきよし申いれ        返2  たりしおほんかへりことに 最上3 綱手3    稲舟4 もかみ川つなてひくともいなふね            お1 のしはしかほとはいかりをろさん  0292:     返2  おほんかへし    引1綱手3 見1 最上3 つよくひくつなてとみせよもかみ 河そのいなふねのいかりをさめて    まうし1  かく申いれたりしかはゆるし  たひたりし  0293:  世の中に大事いてきて新院あらぬ        お1  さまにならせをはしましておん  髪2    仁和寺3お1  くしおろしてにわしにをはします 【を】  参2    阿*梨3  ときゝてまいりて兼賢あさり       明2 はへり1  にあひて月あかく侍しかは かゝる世にかけもかはらすすむ月 をみるわか身さへうらめしきかな  0294:  奈良2僧2科2  ならのそうとかのことによりて       【に】  あまたみちのくへつかはされた         まうす1  りしに中尊寺と申ところに  まかりあひて宮このものかたりすれは  涙なかすあはれなりかゝる事は  ありかたきことなりいのちあらは            まうし1              おもひ1               陳1  ものかたりにもせんと申て思のふ      お1  まうしはへ  へきよしをの/\申侍りて遠国  述懐といふ事をよみはへりし 涙をはころもかはにそなかしつる       おもひ1 ふるき宮こを思いてつゝ  0295:  年頃4   知1 はへる1  としころあひしりて侍人の              ほ1  みちのくにへまかるとてとをき   【 】  国2 別2  くにのわかれとまうすことをよみ  侍し  去1 君いなは月まつとてもなかめやらん        夕暮4  空2 あつまのかたのゆふくれのそら  0296:     高野3  宮法印かうやにこもらせたまひ         荒1寒2  てことのほかにあれさむかりし夜  小袖3  こそてたまはせたりしまたのあ         はへり1  したたてまつり待し こよひこそあはれみあつき心ちして     お1 あらしのをとをよそにきゝつれ  0297:  何*梨3 世1遁2  高野3  あさり兼賢よをのかれてかう  やにこもりてあからさまにとて        て1         僧綱4  仁和寺へいてゝそうかうになりて    【て】ゐ1  かへり来まいらさりしかはいひ  お1 はへり1  をくり侍し 袈裟2         染1 けさの色やわかむらさきにそめて   苔2     おもひ1 けるこけのたもとを思かへして  0298:     しやうのいはや3  大峰の笙石屋にてもらぬ  いはやもとよまれけんをり思いて  られて つゆもらぬいはやも袖はぬれけり  聞1 ときかすはいかにあやしからまし  0299:  深仙にて月を              【れ】 ふかき山のみねにすみける月みすは おもひてもなきわか身ならまし  0300:     谷2に1雲2 月すめはたにゝそくもはしつみ            【な】     ふき1 風2 敷1 けるみね吹はらふかせにしかれて  0301:       【も】  伯母2峰2 申2     見渡3  をはかみねとまうすところのみわた           はへり1  されて月ことに見え侍しかは 姨捨4  信濃3 をはすてはしなのならねといつくに     峰2     あり1 も月すむみねの名にこそ有けれ  0302:  【ゝ】  笹2 まうす1      宿2  ささと申すくにて 庵3   草2 枕3 いほりさすくさのまくらにともな   【ゝ】      【へき】 ひ1笹2 ゐてささのつゆにもやとる月かな  0303:   地1まうす1   はへり1  平ちと申所にて月を見侍しに  こ1  木すゑの露のたもとにかゝり侍しを こ1 木すゑもる月もあはれをおもふへし     具1 ひかりにくしてつゆのこほるゝ  0304:   熊野3  ゐ1  夏くまのへまいり侍りしに 【岩】  いは1   田1まうす1  石たと申所にてすゝみて下向  するひとにつけて京へ西住            はへり1  上人のもとへつかはし侍し 松2 根1岩田3 岸2 まつかねのいはたのきしのゆふすゝみ   【ふ】 君かあれなとおもほゆるかな  0305:  播磨3 書写3  ゐ1  はりまのしよさへまいるとて野       はへり1  中のし水み侍しこと一むかしに            通2  なりてのち修行すとてとをり  侍しにおなしさまにてかはらさり  しかは       中2 清1 むかしみし野なかのし水かはらねは わか1 我かけをもやおもひいつらん  0306:  長柄3  なからをすき侍りしに 津1国2 長柄3 橋2 つのくにのなからははしのかたもなし 名はとゝまりてきゝわたれとも  0307:        方2  みちのくにのかたへ修行して       白河4  関2  まかりしにしらかはのせきにとま  りてところからにやつねよりも   お1     【の】  月をもしろくて能因か秋風そ吹くと  まうし1  申けんをりいつなりけむとあは           関屋3 柱3  れに思ひいてられてせきやのはし  らにかきつけはへりし しらかはのせきやを月のもるかけは 人のこゝろをとむるなりけり  0308:          安芸2  心さすことありてあきの一の宮    ゐ1はへり1    浦2  へまいり侍しにたかとみのうら   まうす1  ふき1      風2  と申所にかせに吹とめられて  程経3   苫屋3  ほとへ侍しにとまやより月の  もりしを見て   お1 浪のをとを心にかけてあかすかな 苫2       友2 とまもる月のかけをともにて  0309:  旅2  たひまかるとて 見しまゝにすかたもかけもかはらねは 月そ宮このかた身なりける  0310:                 旅2 あはれしる人みたらはとおもふかなたひ 寝1床1 ねのとこにやとる月かけ  0311: 宮こにて月をあはれとおもひしは 数2 かすよりほかのすさみなりけり  0312:     もと1  素覚か許にて俊恵なとまかり      【を】 はへり1     懐3  述1  あひてをもひのへ侍しに なにことにとまる心のありけれはさら        厭2 にしもまた世のいとはしき  0313:         高野3  ゐ1  秋のすゑに寂然かうやにまいり  【春】          はへり1  て暮秋述懐とにふことをよみ侍し  に                て1 なれきにし宮こもうとくなりはてゝ かなしさそふる秋のくれかな  0314:       出家2  中院右大臣すけおもひたつ         たまひ1  よしの事かたり給しに月 【いと】    明2      明1はへり1  なとあかくあはれにてあけ侍に             の1  しかはかへり侍にきそのゝちその夜      多2      お1  のなこりおほかるよしいひをくりたま  ふとて 夜1         ちきり3             お1 よもすから月をなかめて契をき         闇2 しそのむつことにやみははれにき  0315:  返2  かへし    見1  【の】 すむとみえし心の月しあらはれて     闇1 この世もやみのはれさらめやは  0316:  待賢門6    堀河4  局3  たいけむもむ院のほりかはのつ   【よ】遁2  仁和寺3  ほね世をのかれてにわしにすまる  るときゝてたつねまかりたれは  住1荒1  すみあらしたるさまにて人の  影2  かけもせさりしかはあたりの人         お1  にかくとまうしをきたりし        お1  はへり1  をきゝていひをくられ侍し      苫屋3 しほなれしとまやもあれてうき             知1 浪によるかたもなきあまとしらすや  0317:  返2  かへし 苫2 とまのやに浪たちよらぬ気色にて    住1憂1 あまりすみうきほとはみえにき  0318:  お1       局3 世1  をなし院の中納言のつほねよを  背2  小倉3 山2 麓3  そむきてをくらのやまのふもとに  すまれしにまかりたりしにこと    優2      風2  からいふにあはれなりかせの気色            書1  さへかなしくおほえてかきつけ  はへり1  侍し 山2お1     お1 やまをろすあらしのをとのけはし さをいつならひける君かすみかそ  0319:          訪1 分1  あはれなるすみかとひにわけ  入1  いりてこの歌を見て又かき     【 】  つけられける           同2 ノ           おなし院兵衛殿 憂1 うき世をはあらしのかせにさそはれて             【ん】 家2          みる1 いへをいてにしすみかとそ見  0320:     腹2     【 】  ある宮はらにつけつかまつる女房    背2  都3  世をそむきてみやこはなれて  遠2  とをくまからむとおもふとて歌         代2  たてまつりしにかはりて            馴1 くやしきはよしなく君になれそめて いとふ宮このしのはれぬへき  0321:  為業4 常盤3 堂供養5  ためなりときはにたうくやうし  はへり1      寺2  侍しに世をのかれて山てらに   【し】    はへる1     親2  すみ侍したしきひと/\まうて           お1  きたりときゝていひをくれる いにしへにかはらぬ君かすかたこそ         【み】【た】 けふはときはのかた身なるらめ  0322:  返2  かへし 色かえてひとりのこれるときは木 はいつをまつとか人のみるらん  0323:  友2 逢1 昔1 【こ】  ともにあひてむかしをこふと  【う】  いふことを いまよりはむかしかたりは心せんあや しきまてに袖しほれけり  0324:  泉3 主2      云2へ1  いつみぬしかくれてあとつたえ          泉3  対2  たる人はかりにていつみにむかひ   旧2  懐2  てふるきをおもふといふ事をひと/\    はへり1  よみ侍しに すむ人の心くまるゝいつみかなむか しをいかにおもひいつらん  0325:          法金剛6  十月はしめのころほうこんかう院            【さ】             西門4  のもみち見はへりしに上せいもん             侍2賢1  院おはしますよしきゝてたいけ(ん)   【の】  門1     時2  も(ん)院の御ときおもひいてられて    殿2の1       局3    お1  兵衛とのゝつほねにさしをかせ  はへり1  侍し        袂3 もみちみて君かたもとや時雨るらん むかしの秋の色をしたひて  0326:  返2  かへし 色2   こ1 いろふかき木すゑを見ても時雨 つゝふりにしことをかけぬまそなき  0327:   覚寺3 滝2     閑2  大かくしのたき殿の石ともかむ院   移2   跡2  にうつされてあとなくなりたり   聞き2  ときゝて見にまかりたりしに  赤染4  今2   【て】  あかそめかいまたにかゝりと      折2  よみけんをり思ひてられて             滝2 瀬1 いまたにもかゝりといひしたきつせの そのをりまてはむかしなりけん  0328:  周防3  すわうの内侍われさへのきのと  かきつけたるふるさとにて      思2 陳1はへり1  ひと/\おもひのへ侍しに      【か】       いゐ2宿2 いにしへはつひいしやともあるものを       【かたみ】 なにをかけふのしるしにはせん  0329:             【の】  為業4 常盤3    ふるさとに2  ためなりときはの家にて故郷  おもひ1     詠1はへり1    述1  思をのふといふ事をよみ侍し   罷2  にまかりあひて    野1 しけきのをいくひとむらにわけ       昔3 なしてさらにむかしをしのひかへさん  0330:  修行してみちのくにへまかり       の1 常2  たりしに野ゝ中につねよりも       塚2  とおほしきつかのみえしを人に  問1はへり1   御墓3  とひ侍しかは中将のみはかとは            し1  これか事なりとまうしゝかは              問1  中将とはたれか事そとまたと       実方4  ひ侍しかはさねかたの御事なりと  まうすいとあはれにおほえてさら           霜枯3  ぬたにものかなしくしもかれのすゝ                語2  きほの/\みえわたりてのちにかた     言2 葉1  らんもことのはなきやうにおほえて               【お】 朽1             お1 くちもせぬその名はかりをとゝめを   桔野3の1  形見3 きてかれのゝすゝきかたみにそする  0331:  堀河4  局3  ほりかはのつほねのもとよりいひ  つかはしたりし          お1 この世にてかたらひをかむほとゝきす 死出2山路3 してのやまちのしるへともなれ  0332:  返2  かへし             語2   死1 ほとゝきすなく/\こそはかたらはめし 出1山路3 てのやまちに君しかゝらは  0333:           ヒテ            ヲ             シ  仁和寺の宮にて道心遂年深           レ  といふことをよませ給しに あさくいてしこゝろの水やたゝふらん        深2 すみゆくまゝにふかくなるかな  0334:  暁の念仏といへることを      鐘2 ゆめさむるかねのひゝきにうちそへ  十度3 御名2唱2 てとたひのみなをとなへつるかな  0335:  法華経序品      花2         て1 ちりまかふはなのにほひをさきたてゝ   法2 筵3   敷1 光をのりのむしろにそしく  0336:  勧持品         空2 あま雲のはるゝみそらの月かけに        姨捨4 うらみなくさむをはすてのやま  0337:  寿量品 鷲2 山2  入l わしのやま月をいりぬとみる人は くらきにまよふ心なりけり  0338:  観心を 闇2     空2 やみはれて心のそらにすむ月は 西2 山辺3 にしのやまへやちかくなるらん  0339:  無常歌あまたよみ侍し中に 鳥辺野4        ゆけ1 とりへのを心のうちにわけ行は     露2 いふきのつゆに袖そそほつる  0340:     【上】 世1 よの中をゆめとみる/\はかなくも なほ1 猶おとろかぬわかこゝろかな  0341: 歳2         お1 とし月をいかてわか身にをくり             世1 けん昨日の人も今日はなきよに  0342:    散1はへり1  桜のちり侍しにならひてまた  咲1  花2  さきけるはなを見て 散1      咲1 ちるとみれはまたさくはなのにほひ   お1 先立3    あり1 にもをくれさきたつためし有けり  0343:  暁無常を      【へ】      【る】        入相4 つきはてんそのいりあひのほとなさを   暁4 このあかつきにおもひしりぬる  0344:  ものあはれにこゝろほそくおほえ   を1        枕3  しおりしもきり/\すのまくら       はへり1  ちかくなき侍しかは       【木】      蓬3     枕3 そのをりのよもきかもとのまくら       虫2 音1 にもかくこそむしのねにはむつれめ  0345:   【門】  同1  はへり1例2  とう行に侍し上人れいならぬ事          明1  大事なりしをり月あかくて  あはれなりしに もろともになかめ/\て秋の月 ひとりにならむ事そかなしき  0346:    前2 無常4  月のまへのむしやうを 月を見ていつれのとしの秋まてか この世の中に契あるらん  0347:                 【と】                 迷2 この世にてなかめなれぬる月なれはまよは  闇2 照1 さ1 むやみもてらさゝらめや  0348:  鳥辺3      業2 はへり1  とりヘ山にとかくのわさし侍し  煙3      更1  けふりのなかよりふけていてし  月を見て 鳥辺野4 鷲2 高嶺3 裾2 とりへのやわしのたかねのすそならん けふりをわけていつる月かけ  0349:   炊1        まうしはへり2  大いの御門の大臣大将と申侍し    【し】      【か】  を1父2 服2    母2  おりてゝのふくのうちにはゝなく    たまひ1  高野3  弔3  なり給ぬときゝてかうやよりとふら  ひたてまつるとて 重2   藤2 かさねきるふちの衣をたよりにて     染1   おもふ1 心の色をそめよとそ思  0350: 【かへ】  返し 藤衣5 ふちころもかさぬる色はふかけれと      染1 あさき心のしまぬはかなさ  0351:  親2   頼2   婿2亡1  おやかくれたのみたるむこうせなと          娘3  してほとなくまたむすめに  お1  おくれたりし人のもとへ          見1 夢2 このたひはさま/\みけんゆめよりも さめすやものはかなしかるらん  0352:  ゆかりにつけてものおもひし          と1  人のもとよりなとゝはぬそとうら      かへり1  みたりし返ことに        思2      言1 あはれとも心におもふほとはかりいはれ ぬへくはとひこそはせめ  0353:         年久4  はかなくなりてとしひさしく        文2   の1  なりにし人のふみをものゝ      見出2て1          娘3  なかよりみいてゝむすめに侍り  しひとのもとへつかはすとて 涙3 なみたをやしのはんひとはなかすへき あはれにみゆるみつくきのあと  0354:  想空入道大原にてはかなく    はへり1  なり侍たりしをいつしか  とひ侍らすとて  寂然      わか1 とへかしな別のそてにつゆしけき 蓬3 よもきのもとの心ほそさを  0355:  返2  かへし    思2 別2 よそにおもふわかれならねはたれをかは 身よりほかにはとふへかりける  0356:  同2  はへり1を1 おもふ1  とう行に侍し上人おはり思さま  なりときゝて           寂然 乱2   を1 みたれすとおはりきくこそうれ       別2 しけれさてもわかれはなくさますとも  0357:  返2  かへし この世にてまたあふましきかなし さにすゝめし人そ心みたれし  0358:         ひ1高野3  ゐ1  あとのことひろいてかうやへまいり   帰2  てかへりたりしに又 いるさにはひとのかたみものこりけり     路1 かへる山ちのともはなみたか  0359:  返し いかにともおもひわかてそすきにける 夢2 山路3 ゆめにやまちをゆく心ちして  0360:  ゆかりなる人はかなくなりてとか       鳥辺3  くのわさにとりへ山にゆきて  【り】  かへる1  返とて             鳥辺山5 かきりなくかなしかりけりとりへやま   【ゝ】 亡1 送2  かへる1 なきをおくりて返こゝろは  0361:  院二位のつほねみまかりてあと            はへり1  に十のうた人/\よみ侍しに 送2    帰2  野辺2朝2 おくりおきてかへりしのへのあさ 露2 つゆを袖にうつすはなみたなりけり  0362: 船岡4  裾野3の1塚2 ふなおかのすそのゝつかにかすそひて むかしのひとに君をなしつる  0363: 後2          言2 葉1 のちの世をとへとちきりしことのはや         【み】 忘2     形2 わすらるましきかた見なるへき  0364:  鳥羽2      お1  とはの院かくれさせをはし      葬送4   を1  まして御さうそふの夜おり    高野3  しもかうやよりいてあひて   は1 おもひ1 とはゝやと思よらてそなけかまし        わか1 むかしなからの我身なりせは  0365:  讃岐3    て1   津1          松2  さぬきにまうてゝまつ山のつと  まうす1 お1  申所に院のをはしましける  【を】    ゐ1  あとたつねてまいりたりしあと  かたもなかりしかは まつ山のなみになかれてこしふねの やかてむなしくなりにけるかな  0366:  白峰4  まうす1墓2  ゐ1  しろみねと申所へ御はかにまいりて          玉2 床2 よしやきみむかしのたまのゆかとても          に1 【ん】 かゝらんのちはなにゝかはせむ  0367:  善通寺5  草2 庵3  せむつうしにくさのいほりむ       はへり1  すひてすみ侍しにいほりの       松2  まへに侍しまつを見て       【み】      わが1 ひさにへて我のちの世をとへよ松            身1 あとしのふへき人もなきみそ  0368:  土佐2    罷2  とさのかたへやまかりなましと          はへり1  おもひたつことの侍しに   【たゝ】 こゝをまたわれすみうくてうかれなは 松2 まつはひとりにならむとすらん  0369:  つねよりもところにつけてあは  れなることのはへりしかは      厭2 いまよりはいとはしいのちあれはこそ      ひ1     知1 かゝるすまゐのあはれをもしれ  0370:  雪2       はへり1  ゆきふかくつもりて侍しに を1        雪2 埋2 おりしもあれうれしくゆきのうつむ           おもふ1             路1 かなかきこもりなんと思山ちを  0371:      谷2 細道4    雪2 なか/\にたにのほそみちうつめゆき ありとて人のかよふへきかは  0372:         【し】  花2 ゐ1  折敷3 霰3  はなまいらせしをりきにあら  れのふりかゝりしかは 櫁3   *伽2折敷3 しきみおくあかのをしきのふちなくは   に1   玉2 なにゝあられのたまとまらまし  0373:  五条三位うたあつめらるゝときゝ  てうたつかはすとて 花2な1 言2 はなゝらぬことの葉なれとおのつから 色2 いろもやあるときみひろはなん  0374:  かへし1           【太】  返       右京大夫俊成     て1   道2 世をすてゝいりにしみちのことのはそ   【は】 あはれもふかきいろはみえける  Description:        罷2 ある人のもとにまかりたりしに  里2 集2 まうす3はへる1           の1 山さとのしふと申ものゝ侍を見 れはさなりけりとをかしくたれか しはさとおほえぬことも書きつけ          顔2 られたりみくるしくかをあかむ心ちすれ   散1はへり1  ひ1 ともちり侍にけれはかゐなくおほえ  三百3  六十3 てみもゝうたむそちこそさること             抜1 はへりきとおほゆれそれをぬき給へと 【て】 末2 見1 申し侍ぬすゑにみ給はむ人むなしき           竜2 こと葉をひるかへしてりう華     悟3     契3 のあか月さとりひらけむちきりに なしたまふへし 宮木3 歌2 みやきかうたかとよあそひたはふ れまてもと申たることのはへる はいとかしこし  抽三百六十首名山家心中  二    一二   一  集、山家集千三百首其中  三百六十也   花三十六ゝ 月三十六ゝ   恋三十六ゝ 雑上 百七十     無題五十首 春卅三首     秋四十七ゝ 夏廿首 冬廿首   雑下八十二首 人/\歌十四首      局3       船岡4 二位(の)つほねのあとの歌にふなを   詠1 かとよみたることはへりそのをりの          【 】    歌2 鳥辺野4 詠1 ひとのうたにとりへのとよまれたる    はへり1    【た】       船岡4 ことの侍しをふなおかにてこそ            鳥辺野4 とかくの事ははへりしにとりへのと      まうしはへり2 はいかにと申侍しかともくるし かるましきよしにてやみはへり     鳥辺野4の1          歌2 集2 にきそのとりへのゝうたはしふ  入1     沖2 白波4 にいりて侍とかやおきつしらなみ 竜田3          白波4 たつた山と申こともはへれはしら   緑3  林3 同2 なみみとりのはやしをなしさま         船岡4 鳥辺3 のことにてこれもふなをかとりへ     筋2 山ひとつすちにてさるへきこと   尋2 かとたつねまほしくおほゆれはかくまう すなり  End  底本::   著名:  新日本古典文学体系46        中世和歌集 鎌倉篇        山家心中集(妙法院本)   校注:  近藤 潤一   発行所: 株式会社角川書店   初版:  1991年9月30日 第 1刷発行  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力日: 2002年12月10日-2002年12月22日  校正::   校正者:   校正日: