Title  高木敏雄と人身御供論  Author  山田野理夫  Subtitle  「人身御供論」について  Description  ・・省略・・  また本書収録の「西行法師閉口歌」の執筆動機となったのは「郷土研究」一巻一号に山口笑が投稿した「西行法師の閉口せし山賤の歌」の一文である。参考にその全文を掲げる。  「甲斐国南巨摩郡西行峠は、駿河路より富士川に沿うて甲斐に至る通路なり、このところを西行峠ということに就て伝説あり、むかし西行法師歌修行のために諸国を旅行し、すこぶるおのれの詠歌を慢〔ホコ〕り、何人もわが相手に立つ者なからんと思いつつこの山道にかかり、一人の山賤〔ヤマガツ〕に遇〔ア〕い、甲州に歌よむ人ありやと問うたり、山賤答えて、御坊は歌よまるるや、私が一首やりたり、聞かしゃれとて いきッちなつばみし花がきッちなに  ぶッぴらいたる桶とじの花  西行この歌を解せず、大に驚き、甲州にては山賤さえかくの如き歌詠あれば、国中に入らば如何なる目に逢うや知れず、修行して後に甲州に入るべしとて、峠より引返したるより西行峠というとぞ、右の方言歌は、往きに蕾〔ツボミ〕なりし花が帰りの時に咲き、桶とじの花とは桜の花のことにて、桜の皮は曲物〔マゲモノ〕をしめ綴るゆえにかく云えるなり、これと同一の伝説安芸国広島ヨシツ地方にもあり、この地にて西行が閉口せし歌というは、 いきさまになにかと見しはもどろさまに  なにかと見ればしやくとじかつのきの花  羽前国鶴岡辺にても同一の伝説あり、歌は えきさまにつぼみし花がかへりちやまに  さくもさいたりわっぱとぢの花  上野国新田郷地方に伝えいるも、大同小異にて をこッこゆきみたがんだそまそこに  ふらきそめたりたぶくりげの花  この歌の意は、おやおや雪を見る如く、それそこに開きそめたる煙草入の樹の花にて、桜の皮にて煙草入を作るより、かくは云うなり、西行法師閉口歌の伝説は、なほこのほかにも諸処にあらん、聞きたし」  ・・省略・・  End   底本:  人身御供論   発行:  1990年06月11日   著者:  高木敏雄   編者:  山田野理夫   発行:  宝文館出版   国際標準図書番号: ISBN4-8320-1359-9  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力機: Sharp Zaurus igeti MI-P1-A   編集機: IBM ThinkPad X30 2672-CBJ   入力日: 2003年12月18日  校正::   校正者: 大黒谷 千弥   校正日: 2004年04月26日  $Id: takagi.txt,v 1.7 2019/07/09 02:30:53 saigyo Exp $