蓮台野


>  0851
> 露と消えば 蓮台野にを 送りおけ 願ふ心を 名にあらはさん

例によって漢字をひらがなにして濁点を除去し、「ん」を「む」に直します。

 つゆときえはれむたいのにをおくり
 おけねかふこころをなにあらはさむ

「露と消え者蓮台野にを〜」 当時の「は」の字母は「者」でした。
「露と消え葉蓮台野にを〜」 とも読めます。
「露と消え晴れむ台野に御送り置け〜」 とも読めます。
さすがにここまでくると、こじつけの感があります。

やはり、当り障りのない新潮版「山家集」の解釈で落ち着くのでしょう。
これによると「れんだいのにを」の「を」は間投助詞(「詠嘆」)です。
「を」のルーツですが中世前期以降みられなくなるようです。下記参照。

新渡戸解釈:
「露のように(はかない命が)消えたならば、
(ご遺体は)是非とも(当)蓮台野(霊園)に、
葬送安置することを(強く)お勧めします。
その名に違わず(蓮華台に座る)願いが叶うでしょう。」

蓮台野霊園分譲のキャッチコピーと思われます。
蓮台野は、もともと墓地一般を指していたそうなので、
死体遺棄防止キャンペーンの標語かもしれません。(根拠なし)

> を
> 《1》(格助)体言またはそれに準ずる語に付く。
     省略
> 《2》(接助)活用語の連体形に接続する。
     省略
> 《3》(間投助)
> (1)文末にあって、活用語の連体形や言い切りの形、または体言を受け、詠嘆の気持ちを表す。
> (2)文中用法。
> (ア)意志・希望・命令の文中にあって、詠嘆の気持ちをこめて、語調を整える。
>     「生ける者遂にも死ぬるものにあればこの世なる間は楽しく—あらな/万葉 349」
>     「恋ひしくは下に—思へ紫のねずりの衣色にいづなゆめ/古今(恋三)」
> 〔上代からある語で、《3》の間投助詞としての用法が最も古いもの。
> 格助詞・接続助詞としての用法は、それぞれ《3》から転化してできたもの。
> ただし、間投助詞としての用法は中世前期以降次第に行われなくなり、
> 接続助詞としての用法も近世に入るとほとんど行われなくなる。
> 格助詞としての用法のみが現代にまで及んでいる〕
大辞林第二版
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西行MLより:2000年7月18日 新渡戸広明